夏はもう終わったものと思っていた。(夏のエヴァ祭り、旧劇地上波初放送に寄せて)

現在、アパレル系企業でwebデザイナーをしている為、7月の終わりから既にムートンブーツの広告デザイン等を作っています。ので、8月に入った時点で、もう夏は終わったものと思っていましたが、まだまだこれからなのでした……。

この夏は、テレビでエヴァ祭りが構成されていて、非常に熱苦しいです。

8月18日 深夜1:59
日テレ:映画天国「EVANGELION:DEATH(TRUE)2 TV版」

8月22日 21時
日テレ:金曜ロードSHOW!「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 TV版」

8月25日 深夜2:14
日テレ:映画天国「EOE 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に TV版

8月29日 21時
日テレ:金曜ロードSHOW!「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 TV版」

9月5日 21時
日テレ:金曜ロードSHOW!「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q TV版」


このラインナップを見ただけで、言いたいことが、三日三晩ぶんくらいある。

エヴァと呼ばれる作品は大量にありますが、メインのものについて簡単にまとめると、まず、最初に、毎週30分のテレビアニメとして放送された「新世紀エヴァンゲリオン」があります。

このTV版は、非常に思わせぶりな脚本と演出、斬新でカッコイイ映像表現、張り巡らされた伏線の数々が面白く、当時リアルタイムで見ていたアニメっ子たち(※わたしもここに含まれます)を夢中にさせました。
が、なんと、全26話中のラスト2話で、これまで盛りまくってきた謎や伏線の、すべてを放棄。一切の謎の解決がなされないまま、なんだか自己啓発セミナーで上映されるビデオのような、抽象的すぎて何もわからないコラージュ映像のようなものが放送されて、番組はそのまま終了してしまいました。
その衝撃はとてつもなく、視聴者は皆驚き呆れ、監督である庵野秀明氏や、制作元であるGAINAXへの凄まじいまでの批判やバッシングが巻き起こり、エヴァンゲリオンはここで一躍「社会現象」として世に踊り出たのでした。

その後、宙ぶらりんのまま終わってしまったTV版の完結編を映画で作ります、と制作元より発表がありました。
完結編に先駆けて、TV版の総集編(DEATH編)と、完結編の前半20分程度(REBIRTH編)をセットにして上映されたのが、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生 DEATH AND REBIRTH」。

その後、DEATH編を再編成し、TV版の総集編の完全版として劇場公開されたのが、今回、8/18に放送される「EVANGELION:DEATH(TRUE)2 」。

そのさらに後、REBIRTH編の完全版として劇場公開されたのが、8/25に放送される、「END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」。
これは、TV版で自己啓発セミナーとなってしまった25話と26話を作りなおしたという扱いなので、「25話『Air』」「26話『まごころを、君に』」というタイトル区分になっています。
現在、一般に「旧劇」「旧劇場版エヴァ」と呼ばれているのが、これです。

本来ならば、この「Air/まごころを、君に」で、エヴァンゲリオンという物語は、残された謎も解き明かしつつ、きちんとした終わりを迎えるはず、でした。少なくとも、視聴者はそれを望んでいました。

しかし、蓋を開けてみると、これは、とても「きちんとした終わり」とは言えない作品でした。ぶっちゃけ、自己啓発セミナー状態だったTV版と、大差がない。2014年の今となっては、ファンの有志による考察がやり尽くされたのもあり、この旧劇場版で監督が言いたかったことの本質は、当時からのコアなエヴァファンには、ほぼ共有されています(興味のある方は、「エヴァ 旧劇 考察」あたりのキーワードでググると、掃いて捨てるほど出てきます)。しかし、問題は本質ではなく、その表現方法でした。監督のルサンチマンの具現化のようなこの作品を、「監督の個人的な、世間に対する呪詛を、よりにもよってお金を出してくれる顧客に対してぶつけてしまった、酷い八つ当たり」のように受け取った視聴者も多く、さらなるバッシングが巻き起こりました。

わたしも、そのように受け取ったうちの一人でした。当時、公開初日に劇場で見ましたが、もう、「胸クソ悪い」とはこういうことか、と思い知るくらいに気分が悪くて、「だから みんな、死んでしまえばいいのに」という映画のコピーに対して、「お前が死ねよ!!!!」とマジギレし、「わたしはサブカルが好きなほうの人間だが、こんな露悪的かつ八つ当たり的な作品を、サブカルだアングラだといってありがたがるような人間にだけは、絶対になりたくない」と呪いの言葉を吐き、「ああもうエヴァのことは忘れよう、エヴァは間違いなくわたしの人生を変えたが、これは悪い夢だった、わたしにとってのエヴァはTV版24話で終わりだ、この映画はもう二度と見返すものか」と、心に誓ったほどでした。

当時、こういう反応を示したのは、何もわたしだけではなかった。
わたしは当時、パソコン通信サービス「NIFTY-Serve」で、全国のエヴァ仲間たちと、毎夜熱心に考察合戦を繰り広げていましたが(そんなファンたちの活動について、監督自身が、名指しに近いかたちで公然とdisっていたのも、正直、胸クソ悪かった)、コアなファンほど、わたしとまったく同様の反応を示す人が多かった。
古くからのエヴァファンに、エヴァの話となると黙っていられない人、エヴァについて異様に詳しいのに、エヴァを愛しているのか憎んでいるのかわからないような言動を繰り返す人が多いのは、こういう経緯があったからなのです。

そんな、非常に悪い意味で我々の人生に多大なる影響を与えすぎた作品「Air/まごころを、君に」が、今回、深夜枠とはいえ、地上波で放送されてしまう。

危機感を抱かずには居られません。

わたし自身は、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が上映された当時、「わたしも、そろそろ、トラウマとしてのエヴァ(式波さんのいうところの「エヴァの呪縛」)を乗り越えなければならない」と腹をくくり、TSUTAYAで「Air/まごころを、君に」のDVDを借りて、見返したのです。劇場上映時に初日に一回見たっきりですから、実に15年ぶりに。久しぶりに見た旧劇は、懐かしくて、相変わらず胸クソ悪かったけれど、なんというか、「あれっ」と思いました。
「あれっ、エヴァって、こんなにアングラだったっけ?」と。

今のエヴァは、アングラというよりは「サブカル」な、わりとポップな「クールジャパン」という売り方がなされていて、そっちにすっかり慣れてしまっている自分を発見して、驚きました。
ただ、当時はとんがりまくって見えた映像表現も、さすがに15年も経つと陳腐に感じるところもあったりして、そういう意味でも、「あれっ?」と思いました。エヴァには、特撮や、特にウルトラマンからの影響が強いと言及されることが多いのだけれど、旧劇のアングラさに関していえば、大島渚からの影響もあるよね……? というような考察もしちゃったりして。予想以上に、客観的に見ることができてしまって、それにも驚きました。旧劇については、冷静に語れないくらい、愛憎入り乱れていたわたしだったのに……。

……と、いうように、わたしは、旧劇から受けた傷を乗り越えるのに、実に15年を費やしました。
ですから、こんな作品を無防備に地上波に、それも若い人も視聴しやすい夏休みの深夜などという枠で放送してしまうことに、果てしのない危機感を覚えずにはいられない。
初代のTVシリーズと旧劇場版を知らず、エヴァといえばリメイク版であるところの新劇場版しか知らない若い世代が、うっかりこれを見てしまったら。「えー、昔のエヴァってこんなんだったの? 変なのー」と軽く引いてスルーしてくれれば良いけれど、わたしと同じように、悪い方向の衝撃を受けてしまい、愛と憎しみが入り乱れて、どこに向ければ良いものかわからなくて自傷に至らざるを得ないほどの混乱にぶちのめされてしまう人が、出てしまわないとも限らない。そうなったら、わたしと同様、回復するまでの15年を、黒歴史として棒に振ることになってしまわないとも限らない……。

そんな類の心配をしてしまいます。基本的に、文化によって人生が変わるほどの衝撃を受けるということは、良いことだとわたしは思っているのですが、こと旧劇エヴァについては、「良い衝撃が受けられる作品だよ☆」とは口が裂けても言えないので、今回の地上波放送には、冷や汗しか出ません。わたしにとっては劇薬指定の作品なのです。閉架式の地下室に隔離して、自力でそこに辿り着いてしまった奇特な人だけが、目にできるようにすべきではないかと思うほどの。完全に老婆心ですけれど、それくらい、今でも苦しい思い出なのです、わたしにとって、旧劇のエヴァというものは。

そんな冷や汗をかきつつも、今回のエヴァ祭りに心躍らざるを得ないのは、こちらも地上波初登場「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の放送が、あるからです。

エヴァQ!
エヴァQですよ!!
エヴァQといえば、渚カヲル(ホモ)!!!!
お茶の間に、ついに全国のお茶の間に、カヲルくん(ホモ)が降臨しますよ!!!!!

ああ、この日をどれだけ待ちわびたことか! わたくし、エヴァQは、映画館で4回見て、Blu-rayは初回限定盤を発売日に予約購入し、これまでに何度見返したかわからないくらい見まくっていて、もはやカヲルくん(ホモ)のセリフなら諳んじられるレベルなんですけれども、それでも当然まったく迷う余地もなく9/5の放送を見ますよカヲルくん(ホモ)のために!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

僕はきみに会うために生まれてきたんだね!!!!!!!!!!!!

……そう考えると、TV版エヴァ24話にたった15分登場したきりのカヲルくんによって、わたしはこの19年間、人生を変えられっぱなしですから(腐った意味で)、そういう意味では、Qも、劇薬指定にすべきなのかもしれません。