
ぼくが 自分を許せていなかった あの頃
オールドファッションに
チョコレートをかけるのが許せなかった
向かい合って座った ミスタードーナツの席で
きみは、
ホットカフェオレのカップを口に運んだまま、
さみしそうに 下を向いて 笑った
今なら
きみのオールドファッションに
チョコレートがかかっていたとしても、
ぼくのオールドファッションにも
チョコレートをかけなければならない
なんて
誰も いわないと
わかるのに
あの頃
ぼくのオールドファッションは、
誰かによって 奪われ
チョコレートをかけられ
うち捨てられるもの だった
その 誰かは
誰でもあり
誰でもなく
きみであり
世界であり
ドーナツの穴の向こうで
世界は丸くちぢこまり
甘くこうばしい香りのする壁を
ぼくは乗り越えられずにいた
<「東京エデン23区(未刊)」より>








